以前、ワークスKさんの掲示板に、ノーフォーク・サザン(Norfolk Southern)鉄道のバッテリー駆動のゼロ・エミッションの入れ換え用試作機999の紹介を書いたことがありましたが、この999のお披露目の式典のビデオをYoutubeで見つけましたので紹介します。
ただ、このビデオ、少々毛色が変わっていて、ペンシルべニア州第9区選出のBill Shuster下院議員の活動報告の一環として公開されているものです。このBlogをお読みになっている皆さんには、第9区というより、アルトゥーナ市を含む選挙区、と言ったほうがわかりやすいでしょう。ご存知の通り、アルトゥーナは、ペンシルべニア鉄道の聖地とでも言うべき場所で、ペンシルべニア鉄道の数々の名機関車を生み出したジュニアタ工場が置かれ、現在は、ノーフォーク・サザン鉄道の整備工場となっています。式典が行われたのは、まさしくこのジュニアタ工場の一角です。
さて、このビデオは上記のような目的で作られていますので、ビデオのほとんどはShuster議員のスピーチであり、我々の興味のあるNS999が主役なのは最初と最後のみです。更に、ワイド画面を4:3に押し込めたためか、縦横比が変になっています。ということで、NS999が活躍する場面を期待されるとがっかりされると思うのですが、まずは一見の価値はあるかと思います。
Shuster議員は、早口で、一部アドリブ的に喋っていて、言葉の端々が聞き取れないところが多いのですが、我々に興味のありそうなところだけピックアップしてみます。いつものように、間違いなどあれば、ご指摘ください。
(1) まずは、挨拶の後、式典会場にNS999を招き入れたところで、機関車が静かだということを強調しています。なるほど、鐘の音だけ聞こえて、エンジン音がしないのは不思議な気がします。日本では、ハイブリッド自動車が静か過ぎることに起因する安全問題が言われていますが、もしもNS999のようなバッテリー駆動の機関車が主流になったとすると、ヤードでの安全性が問題になったりするのでしょうか。
(2) この機関車が出来上がるまでの関係者として、ノーフォーク・サザン鉄道、ペンシルベニア州立大学、米国運輸省(Department of Transportation、以下DOT)、連邦鉄道局(Federal Railroad Administration、以下FRA)、米国エネルギー省、があげられています。
参考までに、ペンシルベニア州立大学が何を分担したかが、このページに述べられています。詳細には立ち入りませんが、バッテリーの充放電の管理、長寿命化などの技術開発を担当したとあります。
(3) 資金については、2008年、2009年に、それぞれ60万ドル(=5400万円)、70万ドル(=6300万円)を連邦政府から獲得し、2010年には100万ドル(=9000万円)を獲得見込み。連邦政府からは、このほかにもFRAが70万ドル(=6300万円)をこれまでに拠出。このほか、ノーフォーク・サザンが独自に200万ドル(1.8億円)を支出。(注:1ドル=90円で計算)
(4) このような機関車を作る意義として、外国から輸入する油への依存度を下げられること、化石燃料の依存からの脱却、排出ガスのクリーン化がはかれること、を言っています。「これらの技術は、他の鉄道や、世界に展開できる」点で意義があるということも強調しています。
(5) 更に、ジュニアタ工場で働く900人の人に対する感謝と今後への期待、そして今後の予定として、更に2台の試作機を作ることが述べられています。
このほか、私が面白いと思ったのは、以下2点です。議員さんとしては、これは大きな成果であり、社会的にも意義のあることである、ということを主張したいのだと思います。詳しくは、米国の予算獲得のメカニズムを理解しないと議論できないので、今回はここまでとしておきます。
(a) 来賓の紹介 この式典には、米国運輸省の長官、ペンシルベニア州の運輸委員長、アルトゥーナ市長が呼ばれています。大物を揃えたということでしょう。
(b) 税金の獲得と還元 歳出委員会を通じた連邦予算を獲得したこと、それが地元のために使われ、なおかつ、アメリカにとってそれが意味のあることである、ということを強調しています。